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マーティー・ブラウンさん 2008.10.06

マーティー・ブラウンさん
(広島東洋カープ監督)


日本でもない アメリカでもない
「私たちのやり方」を信じて進む

 身長183センチ、体重95キロ。大柄だけど目が合うと子供のようにおどけて笑う愛嬌たっぷりのブラウン監督。日本の広島東洋カープの選手から監督へ。選手と共に汗を流し、試合では全力で選手を守る。ファンへの思いや選手とのコミュニケーション、そして語学について語ってもらった。






■選手と共に汗を流して





  「ナイス!」「グーッド!」

 屋内練習場に、ひときわ明るく大きな声が響く。選手のバッティングに付き合い、ピッチングをしているのは、コーチの一人だと思っていたら、ブラウン監督その人だった。いったい何球、投げたのだろう。顔からは汗がポタポタ流れ落ちている。

 「いつもそうだよ。選手と一緒に練習し、声をかける。日本の監督の多くは、みんなが練習しているのを遠くから腕組みして眺めているよね。そして、何か意見があるとコーチに伝えて、今度はコーチが選手に伝える。僕はそれをしない。一対一で選手と向き合って汗をかく。選手と意見交換ができるし、彼らから尊敬の念を勝ちとることができる。アメリカでも、『この監督はいい監督だ』と思う人は、選手と一緒に汗を流しているよね」
■叱っているの? ほめているの?

 反対に試合中は多くを語らない。ゲームの状況にもよるけれど、ブラウン監督の指示はとてもシンプルだ。普段からコミュニケーションを取っているので、ピッチャーやキャッチャーには、シンプルに伝えただけで考えが伝わるのだという。

 去年のことだ。大事な場面で大竹投手がマウンドに上がったとき、監督が伝えた言葉がある。



 「私は、大竹選手にこう言ったんだ。『おまえは、今、勝とうとしてピッチングしているのか? 負けようとしてピッチングしているのか?』と。この言葉は彼の胸に刻まれたはずだよ」

 一方、選手にアドバイスを送る以上に、気を使うことがある。それは叱るときだ。テレビカメラやほかの選手の前では決して叱らない。通訳を介さないといけないにしても、自分のオフィスなど、誰もいないところに呼んで、意見を伝える。

 「みんなの前で指摘されては、選手も恥と感じてしまう。そうなると、選手から尊敬の念がなくなってしまうだろうね」

 そう、淡々と語る監督は、とても静かで穏やかだ。しかし、ブラウン監督といえば、かの有名な「ベース投げ事件」の主人公。試合中、ベースを引っこ抜いて、5メートルも放り投げ、退場になった話はあまりに有名。そんなことをやってのけた監督と、目の前のお行儀のよい監督は果たして、同一人物なのだろうか? もっと熱血漢でやんちゃな監督を想像していたのだけど……。

 「どうしてベースを投げたかって? 試合中に何かが起こって、チームの状況がマイナスになってしまったとき、監督は選手たちのために立ち上がらなければならないこともあるんだ。おかげで選手たちは大奮起! もちろん勝ってくれたよ」

 しかし、日本で監督を始めたばかりのころは、試行錯誤の連続だった。何よりも苦労したのが言葉の壁。長い説明では通訳についてもらうが、練習中の掛け声やほめ言葉はたいてい英語。ときには、こんな誤解もあった。

 「僕がほめたのか、叱ったのか、選手に伝わらないこともあってね。例えば、つい興奮して、ちょっとしたスラングが出てしまうことがある。普段は悪い意味として使われる言葉も、親しい者どうしなら、『すっごくいいプレーだね!』と強調として使うことがあるんだ。ネイティブであれば、状況で判断できる。日本でも、そういうことはあるでしょう。何度も使っているうちに、『もしかして、選手は叱られていると思っているんじゃないか?』と思い当たった。それで、ミーティングのときに、聞いてみたらやっぱり、その通り!ようやく誤解を解いたので、今では安心して使えるよ」
■語学の勉強は興味のある単語から!





 一つひとつ、言葉の壁を乗り越える。監督の言葉を理解しようと、英語を学び始めた選手もいる。その一方で、監督も日々、日本語学習に取り組んでいる。

 「広島東洋カープの一番若い通訳が、私の興味のあるもの……相撲やベースボールなどで使われる単語を使って、テキストブックを手作りしてくれたんだ。今は、それを使って勉強しているよ。あと、アメリカ人のリブジーコーチがアメリカで買った『日本語の悪い言葉集』はおもしろかったなあ。内容的には使うことはないんだけど、いろいろ新しい発見があったよ。どんなことが書いてあったかって? それはとても言えない(笑)。まあ、スラングがいっぱいだったけど」

 「興味のある単語から覚える」のがブラウン流。もう何年も日本で暮らしているので、ある程度の言葉は頭に入っている。

 「ワンセンテンスに2,3の単語が出てくれば、ああ、こういうことを言っているんだな……と推測できるよ。そして、通訳してもらって、実際に合っているかどうかを確認する。日本人が英語を学んでいるときも同じでしょう。単語と単語がわかって初めて、全体の意味をつかんでいくよね」
■ヤジではなくエールをくれた広島ファン




 しかし、どんなに選手と監督の信頼が厚くても、なかなか勝てないときもある。そんなとき、力をくれるのは、広島ファンの人々だ。ブラウン監督は、選手同様、ファンをとても大切にすることで知られている。

 「広島での現役時代のこと。僕がスランプになったときもね、ファンは決してヤジを飛ばさず、心から応援してくれたんだ」

 監督となって、広島に戻ってきても、いつも何か恩返しすることができないかと考えていたというブラウン監督。そんなとき、地元のカキが風評被害にあった。あってはならないことだった。

 「真っ先にカキを食べてマスコミに安全をアピールしたよ。選手のときだけじゃない。監督業をしている今だって、ファンにずいぶん助けられている。だから、地元のカキ業者が困っているときこそ、自分にできることはないか考えたんだ」

 広島で選手として3年、アメリカでの監督を経て、また監督として広島に戻ってきた。トータルで6年間、広島に暮らすブラウン監督は、「もう、この街の出身のような気がする」と笑うほど広島の街になじんでいる。

 「広島は美しく素晴らしい街。景観だけじゃない。この街が美しいのは、何事にも一生懸命で謙虚な人々がいるから。ここからたくさんのことを学んだよ」
■二つのスローガンの意味とは





 広島東洋カープには二つのスローガンがある。一つは、ユニフォームの左肩に入れた「ALL-IN」。これは、3年前に監督自身が考えたもの。そして、帽子に書かれた「激」の一文字はカープの松田オーナーの発案だという。

 「この『激』という字は、私が見よう見まねで書いたものが、そのまま刺繍になったのさ。ほら、意外と上手に書けているでしょ? どうして、英語と日本語の二つのスローガンがあるのか。それは、アメリカのやり方でもなく、日本のやり方でもない。『私たちだけのやり方』という意識の表れなんだ」

 選択するのではない。アメリカと日本の文化を肌で感じてきたブラウン監督だからこそ、たどり着いた融合の哲学。「ALL-IN」の精神で、今年も選手とファンとともに勝利を信じて激闘に挑む。


(取材・文 白石あづさ)

マーティー・ブラウン(Marty Brown)
1963年生まれ。アメリカ合衆国オクラホマ州ロートン出身。ジョージア大からシンシナティ・レッズに入団し、ボルティモア・オリオールズなどを経て、1992年に広島に入団。引退後、マイナーリーグの監督に就任。2004年にはリーグ優勝するなど活躍。2006年から広島東洋カープ監督を務めている。背番号は71。
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